親戚の結婚式や子供の七五三など、日本人女性なら人生で何度か着物を着る機会があるのではないでしょうか。
普段とは違う装いは、心身ともにシャキッとしますが、お手洗いや移動など、普段とは違うからこそ何かと煩わしいことが多くなりますよね。
特に車で移動する場合や自分が運転しなければならない場合には、着物や草履のまま運転してよいのか、交通違反にならないのかと心配になることも。
つい最近も、僧衣で車の運転をしていたお坊さんが違反切符を切られたニュースがありましたが、そのニュースを見てびっくりした人も多いはずです。
今回は知っているようで実は知らない着物での車の運転についてご紹介します。
着物の着用時はシートベルト免除になる?
着物って動きづらいしせっかく着付けた帯が崩れたら嫌だからシートベルトはしなくて良いかしら…なんて考えているそこのあなた!
その気持ちとってもよくわかります!
でもシートベルトの装着は運転者の義務で、なおかつ全席装着が原則なので、後部座席の同乗者もしっかりシートベルトを装着する必要があります。
後部座席のシートベルト装着は2008年の道路交通法改正によって義務つけられたのですが、いまだに勘違いしている人、知らない人も多いのでしっかり覚えておきましょう。
自分の都合だけで判断してシートベルトを装着していないと、道路交通法違反になる場合があるので注意が必要です。
では、シートベルトの装着が免除されるのはどのような場合でしょうか。
シートベルト装着が免除されるのはどういうケース?
シートベルトの装着について定められている道路交通法第71条3にはこのように書かれています。
[自動車の運転者は、(中略)座席ベルトを装着しないで自動車を運転してはならない。ただし、疾病のため座席ベルトを装着することが療養上適当でないものが自動車を運転するとき、(中略)その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。]
つまり、[疾病のため]と[その他政令で定めるやむを得ない理由]以外の理由でシートベルト(=座席ベルト)を装着していないと違反になってしまうというわけです。
さらに道路交通法施行令には、シートベルト装着が免除される場合について具体的にこのように書かれています。(以下内容抜粋)
[運転席]
・負傷や障害、妊娠中であることにより座席ベルトを装着することが療養上または健康保持上適当ではないものが自動車を運転するとき
・著しく座高が高いかまたは低いことなど身体の状態により適切に座席ベルトを装着できないものが運転するとき
・自動車を後退させるために運転するとき[運転席以外]
・負傷や障害、妊娠中であることにより座席ベルトを装着することが療養上または健康保持上適当ではないものを運転席以外の乗車装置に乗車させるとき
・著しく座高が高いかまたは低いことなど身体の状態により適切に座席ベルトを装着できないものを運転席以外の乗車装置に乗車させるとき
シートベルト装着が免除になるケースは他にもありますが、自家用車でお出かけする際に該当する可能性があるケースを上に抜粋してみました。
運転者も同乗者も、健康上、療養上の問題がある場合や、適切に装着できない身体状況である場合を除いては、シートベルト着用の義務があります。
着物を着ているだけではシートベルトの免除対象にはならない!
道路交通法施行令を見てわかる通り、着物はシートベルトの装着免除項目に該当しません。
着物を着ていてなおかつ妊娠中や、療養上の理由でシートベルト着用が難しい場合には違反にはなりませんが、ただ着物を着ているというだけではシートベルトの免除対象にはなりませんので気を付けましょう。
草履をはいたまま運転するのは違反?
着物を着る日は、頭のてっぺんからつま先まで着物に合わせた装いをするものです。
特に年に何度も履くわけではない草履であちこち移動するのはなかなか大変ですよね。
そんな不慣れな草履ですが、果たしてそのまま車を運転しても問題ないのでしょうか。
車の運転時の履物について
車の運転者には道路交通法第70条で安全運転の義務が定められています。
[車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない]
運転者の服装や履物が[当該車両等のハンドル、ブレーキその他装置を確実に操作]することができ、安全運転をする上で支障をきたさないものであれば問題ないということですね。
しかし、問題があるかないかは私たちではなく、警察が判断することになります。
では、草履で車を運転すると違反になるのでしょうか。
実はこの答えは都道府県によって違います。
各都道府県の公安委員会が定める道路交通法細則というものがあり、この中の運転者の遵守事項の中に履物や服装の規定があるところもあります。
関東地方だと、東京都は
[木製サンダル、げた等運転操作に支障を及ぼすおそれのあるはき物を履いて車両等を運転しないこと(東京都道路交通規則第8条)]
と草履の明記はありませんが、下駄がダメということは場合によっては草履も違反になりかねない表現です。
神奈川県の
[げた、スリッパその他運転を誤るおそれのある履物を履いて車両を運転しないこと(神奈川県道路交通法施行細則第11条)]
も東京都と似た表現でどちらともとれますね。
他の自治体では履物の具体例がよりしっかりと定められているところや、反対に具体例がほとんど示されていないところもあるので、同じ履物でも各都道府県によって対応が異なってしまう可能性があります。
草履での車の運転は違反になる可能性が高いので避けるほうが◎
道路交通法細則にも「草履はダメ」との明記はありませんでしたが、下駄やサンダルなどブレーキを踏む際に引っかかってしまう可能性があるなどの理由で禁止されていることを考えると、草履も違反になる可能性が高いと言って良いでしょう。
違反になるかどうかに関わらず、車の運転は一瞬の判断ミスや操作ミスで重大事故に繋がってしまうので、運転時はブレーキペダルの間隔が違ったり、引っかかったりする可能性のある履物は極力避けるようにしましょう。
都道府県によって扱いが違うかもしれないなんともグレーゾーンな草履ですが、車の運転は安全第一が大切です。
草履の他に履きなれた靴を一足車に積んでおいて、運転する際には履き替えるようにしましょう。
また、着物が足の可動域を制限するという理由で違反とみなされる可能性もゼロではありません。
着物を着て運転する際には、足元の操作がしやすいようにしっかりと着物をたくしあげて運転席に座ることをおすすめします。
着物や草履で車の運転するのは違反?-まとめ
着物を着ていたとしても、シートベルトの装着免除になる理由がない限りはしっかりとシートベルトを装着しましょう。
また草履での運転も、ブレーキペダルを踏む際に引っかかってしまい、重大な操作ミスを引き起こす可能性が高いので避けることをお勧めします。
着物を着た状態で車の運転者になる際には、草履から履きなれた靴に履き替え、アクセルやブレーキペダルの操作に支障をきたさないように着物の足元をたくしあげて運転するようにすればより安全です。
正しい知識と方法で、晴れの日を安心安全に過ごしてくださいね。
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